Kimi K3はAPIから試す2.8兆パラメータモデル
Kimi K3は、Moonshot AIが公開した総パラメータ2.8T・アクティブ104Bのオープンウェイトモデルです。896の専門部分からトークンごとに16を選ぶMoEで、コンテキスト長は1,048,576トークン。公式は世界初のオープンな3T級モデルと説明しています。
| 項目 | 公式モデルカードの記載 |
|---|---|
| 総 / アクティブパラメータ | 2.8T / 104B |
| 専門部分 | 896、トークンごとに16を選択 |
| コンテキスト | 1,048,576トークン |
| 入力 | テキスト・画像、紹介文では動画理解も記載 |
| ウェイト | Kimi K3 License |
公式APIではモデル名kimi-k3を指定します。公式トップの価格は100万トークンあたり、キャッシュ命中入力$0.30、通常入力$3、出力$15です。2.8Tのウェイトを一般的な個人向けPCで動かすより、まずAPIまたはKimi Codeで適性を測るほうが現実的です。

※ 用語:API=モデルの機能をアプリから呼び出す接続口。オープンウェイト=学習済みの重みを取得できるモデル。MoE=入力ごとに使う専門部分を選ぶ構成。コンテキスト=1回の処理で参照できる入力と出力の範囲。トークン=モデルが文章を処理するときに数えるデータの単位。
Kimi K3のReasoning・Coding評価を読む
公式評価表の同モデルは、すべて推論量max・temperature 1.0です。単発の推論課題はtop-p 0.95、エージェント課題は1.0という条件も明記されています。モデル名の横にある条件が違うため、数字だけの単純な順位表として読むべきではありません。

Reasoning & Knowledgeでは、GPQA Diamond 93.5、CritPt 23.4、AA-LCR 74.7です。HLE-Fullの43.5 / 56.0は、ツールなし / 一般ツールありの順です。同モデルが全項目で首位ではなく、たとえばGPQAはGPT-5.6 Solの94.1、HLE-FullはClaude Fable 5の53.3 / 63.0が上回っています。

CodingではProgramBench 77.8、Terminal-Bench 2.1は88.3、FrontierSWEは81.2、SWE-Marathonは42.0です。強い項目はあるものの、Terminal-BenchではGPT-5.6 Solの88.8、FrontierSWEではClaude Fable 5の86.6が上です。
さらに各モデルでKimi Code、Claude Code、Codexなど評価ハーネスが異なる項目があります。自分のCLIとコードベースで再評価する必要があります。
※ 用語:Reasoning=途中の検討を重ねて答える推論。temperature / top-p=出力候補の選び方を調整する設定。評価ハーネス=課題の実行と採点を行う仕組み。
Agentic評価は得意不得意が混在する
Agenticは、検索、ツール操作、複数手順の作業を最後まで進める能力を見る領域です。同モデルはBrowseComp 91.2、DeepSearchQA 95.0、ResearchRubrics 76.2、MCPMark-Verified 94.5を記録しています。

一方、MCP-Atlasは84.2でClaude Fable 5の84.7、OSWorld 2.0は58.3で同66.1を下回ります。長い表から「エージェントが強い」とだけ結論づけず、自分が必要な操作に近い行を見るのが大切です。Web調査ならBrowseComp、MCPツール連携ならMCPMarkやMCP-Atlas、画面操作ならOSWorldを手掛かりにします。
公式脚注ではBrowseCompに300Kトークンで文脈圧縮する戦略を使い、100万トークンを管理なしで使った場合は90.4と説明されています。コンテキスト上限が大きくても、履歴の整理方法で結果が変わる例です。
※ 用語:Agentic=モデルがツールを使い、複数段階の作業を進める性質。MCP=AIと外部ツールやデータを共通形式で接続する仕組み。文脈圧縮=長くなった履歴を要約・整理して入力を短くする処理。
Vision評価は画像・動画入力の判断材料になる
Vision領域ではOmniDocBench 91.1、Video-MME(字幕あり)90.0、MMVU 82.1です。文書画像や動画を扱う個人アプリには参考になりますが、PerceptionBenchは58.5でGPT-5.6 Solの59.7、BabyVision with Pythonは85.7でClaude Fable 5の90.5を下回ります。

MMMU-Pro、CharXiv、MathVision、ZeroBenchの2つの数字は、ツールなし / Pythonありの順です。このモデルのMathVisionは94.3から97.8へ上がります。これはモデル単体の視覚理解と、コード実行を組み合わせた結果を区別して見るための表記です。
画像を扱うアプリでは、撮影条件が近い20〜50枚を用意し、読み取り結果を人手で確認します。動画は字幕の有無でも条件が変わるため、公式のw. subを字幕なし性能だと解釈しないようにします。
※ 用語:マルチモーダル=テキスト以外に画像など複数形式を扱う能力。w. sub=字幕付き。Pythonあり=コード実行ツールを併用した評価。
個人開発でAPIとKimi Codeを試す手順
アプリへ組み込むなら公式API、開発作業そのものを任せるならKimi Codeが入口です。APIはOpenAI / Anthropic互換で、このモデルは常に思考が有効です。複数ターンではcontentだけでなく、返されたreasoning_contentとtool_callsを含むアシスタントメッセージ全体を次のmessagesへ戻すよう公式モデルカードが指定しています。
個人開発では次の順で試します。
- 要約、バグ修正、画面読み取りなど用途別に20件ずつ固定する
- 正解率、所要時間、入力・出力トークン数を記録する
- 画像、長文、ツール利用を一度に混ぜず、機能ごとに評価する
- Kimi Codeでは同じ修正を別のコーディングCLIにも依頼し、差分とテスト結果を比べる
通常入力3,000・出力1,000トークンの処理を1,000回行う単純計算は、キャッシュを除いて入力$9、出力$15の計$24です。100万トークンを毎回埋める必要はなく、関連ファイルだけを渡して品質が落ちないか確かめるほうが、費用と待ち時間を抑えられます。
DeepSeek-V4-Flashのような低価格モデルと同じ評価セットを使い、高品質が必要な処理だけこのモデルへ送る構成も検討できます。
※ 用語:OpenAI/Anthropic互換API=各社向けSDKと似た形式で呼び出せるAPI。reasoning_content=モデルの推論内容を返す応答フィールド。tool_calls=モデルが外部機能の実行を要求する応答データ。
個人的な見解とKimi K3利用時の注意点
個人向けの見解
このモデルの価値は、2.8Tという規模そのものより、コーディング・検索・画像を同じモデルで評価できる点にあると考えています。ただし公式表でも全項目首位ではありません。用途別の小さなテストを通し、良かった処理だけ採用するのが安全です。
個人開発での安全確認
- ウェイト利用前にKimi K3 Licenseの条件を確認する
- APIへ送るコード、画像、文書の取り扱いを公式規約で確認する
- 比較時は推論量、ツール、評価ハーネス、字幕などの条件をそろえる
まとめると、同モデルは2.8T / 104B、100万トークン、ネイティブな視覚入力を備え、公式APIは入力$3・出力$15/100万トークンです。ベンチマークはReasoning、Coding、Agentic、Visionを分け、自分のアプリに近い行と評価条件まで読む必要があります。
※ 用語:ライセンス=ウェイトの利用・改変・再配布などに適用される条件。







